繰り返す「ぎっくり腰」

ぎっくり腰とは急性腰痛症と呼ばれます。何かを拾おうとした時、何気ない動作をした時にギクっと腰に痛みが走り動くことができません。

痛みの程度や患部は人によって様々です。慢性的に体が固く姿勢が悪い、疲労の蓄積、冷え、ストレスや睡眠不足などによって固くなった筋肉や靭帯などが損傷したり腰椎椎間板ヘルニアを起こす事もあります。

ぎっくり腰の直後

発症直後2日程度は炎症があるので無理に動かさない。焦って無理にストレッチをしたり患部をマッサージしないよう注意しましょう。足が痺れる(坐骨神経痛)ようなら腰椎椎間板ヘルニアの可能性もあります。その際は念のため整形外科でレントゲンやMRIで画像診断してもらいましょう。

応急処置

2日程度はタオルを巻いた保冷剤や氷嚢で患部を冷やします。市販の鎮痛薬やシップも使いましょう。コルセットや腰痛ベルトを活用すれば患部が固定され安静を保つ事ができます。
整形外科やペインクリニックのブロック注射も有効です。いづれにしても炎症期(痛みのピークが過ぎるまで)は安静にしてお風呂で温まらないようにしましょう。

ぎっくり腰の姿勢と動作

寝ている時に足を伸ばしていると大腰筋の緊張で腰が反り痛みが強くなります。仰向けの場合は膝の下にクッションなどを置くか、横向きで膝を曲げておきましょう。
起きるときは横向きになってから手をついてゆっくり起きる。立つときもどこかに捕まって腰に力を入れないよう腕の力を使って立ちましょう。ゆっくり慎重に動きましょう。

痛みのピークが過ぎたら

1週間を過ぎても痛みが変わらないようなら脊椎疾患の可能性がありますので整形外科で診てもらいましょう。
長期の安静は筋肉や軟部組織が硬くなり血流も滞るので治りが遅くなる傾向があるようです。痛みのピークが過ぎた3日~1週間後くらいからできる範囲で動かしましょう。今度は温めるようにすると良いでしょう。

腰痛体操/腰痛ストレッチ

痛みと相談しながらゆっくり無理のない範囲で行いましょう。

  1. ゆっくり大きく息を吸い、お臍を背中につけるようなイメージで大きく吐く深呼吸(ドローイン)
  2. 仰向けの状態で膝を抱える(腰を丸める)
  3. 四つん這いで背中を丸めたり戻したり(キャット&ドッグ/キャット&カウ)
  4. 太もも裏(ハムストリング)を伸ばす
  5. 股関節を回す
  6. うつ伏せの状態から肘を立ててお腹から鼠径部あたりを伸ばす

ぎっくり腰は繰り返す

痛みが引いても炎症が治まっただけなので何もしないでいると繰り返し再発します。「またぎっくり腰になりそうだった」という方がよくお越しになりますが、ぎっくり腰を繰り返す人は体幹や下半身の筋力が弱く柔軟性がありません。

腰を守る姿勢と動作

日常生活において腰を守る動作を心掛けるだけでも腰の負担が軽減します。

例えば顔を洗う時、物を拾う時など腰を丸める姿勢は良くありません。これは上半身だけ前傾しているだけで骨盤は前傾していない状態なので腰に大きな負担がかかっています。ハムストリング(太ももの裏)が硬かったり脚力の無い人が陥りやすい姿勢です。

腰に優しい中腰姿勢をとるには体幹力(背筋/腹筋)、脚力、股関節の柔軟性が必要です。顔を洗う時はできるだけ膝を曲げて腰を落とし骨盤ごと上半身を倒しましょう。もしキツイ姿勢だと感じたら片足を適当な台に乗せると安定しやすいです。

介護や重たいものを持つような力仕事の場合でも、両ひざを伸ばしたまま腰を丸くして持つのは絶対に避けましょう。重いものを持つ時もしっかり膝を曲げて腰を落とし、できるだけ上体を起こして作業しましょう。

どうしても前かがみになる場合は、どこかに片手や片肘を付く、足を前方に出すなど工夫すると腰への負担が軽減します。股関節の筋力と柔軟性は必要です。

重いものを持つときに息を止めると腰を守ることができます。これはお腹全体に力が入り風船のような腹腔に腹圧がかかります。腹圧がかかると体幹が固定され天然のコルセットの役割を果たします。腹圧ベルトや普通のコルセットも同じ役割を果たすので活用しても良いでしょう。腹圧を上昇させる方法は高血圧の方にはあまりお勧めできません。

ぎっくり腰の予防

筋肉が伸縮しないと骨盤の傾きが起こらず腰椎や椎間板に大きな負担がかかります。痛みがないからといって何もしないで放置していると腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症になるリスクが高くなります。

腰椎の形は加齢とともに変化しヘルニアがあっても無症状の場合も多いようですが骨や軟骨の変形は自然治癒しません。

ぎっくり腰になりやすい人は、日頃から腹筋(特に下腹部)・背筋・股関節を中心にバランスよく筋力をつけ、前述のような腰痛体操をして柔軟性を維持しておきましょう。

自分で難しい場合は国家資格を持ったマッサージ師をご活用ください。疲れて緊張した筋肉は定期的にほぐしてあげましょう。